記憶はどこに消えた?

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マッコイ・タイナー!!!ライブ・アット・スイート・ベイジル(`・ω・’)

最高にかっこいいピアノトリオ・アルバムのご紹介です。f:id:nitamago8:20200517210050j:plain

マッコイ・タイナー:ライブ・アット・スイート・ベイジル

パーソネル:マッコイ・タイナー(p)エイブリー・シャープ(b)アーロン・スコット(ds)

DISC1

1.クレッセント 2.モンクス・ドリーム 3.ターン・ザット・ドリーム 4.スイート・ベイジル・スイング 5.ラウンド・ミッドナイト

DISC2

1.イエスタデイズ 2.リオ 3.ドント・ブレイム・ミー 4.ジャスト・イン・タイム 5.ナイーマ 6.ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン

 

ジャケットからしてイケているこのアルバムは、偉大なジャズピアニストの10指に入るであろう神域のピアニスト、マッコイ・タイナーによるニューヨークのクラブスイート・ベイジルで収録されたアルバムとなります。

この作品の制作レーベル、パドル・ホイールはキングレコード傘下のレーベルで、つまりは日本企画のアルバムとなっています。

本作は1989年録音ですが、この年頃のマッコイはジョン・コルトレーン・カルテットのピアニストとして活躍した60年代、独立し鮮烈な作品をゴリゴリ出していた激動の70年代を経て少し落ち着いた時期であり、スタンダードを中心とするライブ盤といった秀作を複数録音しています。個人的には、マッコイだけに限った事ではありませんが実験的なスタジオアルバムよりもオーソドックスなライブアルバムの方が好みです。やはりそういった作品はいつでも、物理的または精神的にどんな状態であっても割とスンナリと聴く事ができ、重宝します。

さて曲を聴いていきましょう。

DISC1開幕からコルトレーンの難曲クレッセントが炸裂します。めちゃくちゃ熱いです。怒涛のマッコイフレーズの洪水に頭がおかしくなりそうです。そして我らがセロニアス・モンクのモンクス・ドリームへと続きます。躍動感がありグルーヴィなベースがかっこいいです。4番のスイート・ベイジル・スイングはクラブ名を冠したオリジナル曲となります。チョッパヤの超絶技巧が聴けます。ペンタトニックの連打にまたも頭がおかしくなります。そしてラウンド・ミッドナイトでしっとりと締めます。

DISC2ですが、名曲中の名曲スタンダードのイエスタデイズから始まります。アート・テイタムのようなクラシカルなイントロからデリケートなテーマに繋げていき、自然な流れでアドリブが躍動するのですが、鳥肌が立つような情感と技巧に溢れています。まさしくヴァーチュオーゾといった洗練された演奏で、これだけでもこのアルバムを聴く価値があると思います。続いてマッコイのオリジナル曲リオですが、サンバの楽しい楽曲になっています。しかしマッコイらしい一筋縄ではいかないマッコイ的な展開を繰り広げる怪演となっています。5番のナイーマはマッコイを聴く上で避けては通れないコルトレーンの名曲で、いつも通りバラードでしっとりと聴かせます。何度も演奏されている楽曲ではあるのですが、どれを聴いても素晴らしいです。マッコイのコルトレーンに対するリスペクトが痛い程伝わってくる演奏だと思います。

 

マッコイ・タイナーはジャズピアノを少しでもやった人間にとっては本当に憧れのピアニストで、私自身マッコイの演奏が流れてくる度手を止めて聴き入ってしまいます。複雑なリズム感や独特のタイミング、フレージングで演奏のコピーが難しいピアニストでもあります。

そんな偉大なマッコイ・タイナーですが、唯一と言っていい欠点が音源をBGMとして使えない事です。どのアルバムも熱い演奏が多く、つい聴くことに集中してしまうのです。

そういった点に留意し、ぜひ気を引き締めて本作を聴いて頂ければと思います。良いスピーカーをお供にどうぞ。