記憶はどこに消えた?

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ブラック・ミラー:バンダースナッチは我々を支配するのか?

今更ではありますが、Netflix専用配信の映画、ブラック・ミラー:バンダースナッチを視聴し大変刺激を受けた為、ご紹介します。

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 出典:Netflix

ドット絵で表現された、怪物バンダースナッチをイメージしたと思われるライオンのようなグラフィック。サムネイルの時点から名作のオーラをプンプン放っています。

 

ブラック・ミラーについて

本作はイギリスの有名なテレビドラマ、ブラック・ミラーより制作されたスピンオフ作品となっています。

ブラック・ミラーは社会風刺の中にダークで刺激的な要素を加えたSFで、荒廃した世界観やひねりの効いたブラックユーモア、救いようのない不可逆なバッドイベント等を特徴とした、近年の先進的な映像界を代表するような知的で野心的な作品となっており、大変見応えがあります。

2011年よりイギリスで放映開始されたこのドラマですが、2015年にNetflixが番組を買収した経緯があり、以降は同サイトでの専用配信となっているようです。

その流れでエッジの効いた単発作品として2018年に配信されたのがこのバンダースナッチとなります。

現在ブラック・ミラーはシーズン5まで配信されているのですが、4と5の間に制作されたのが本作となっています。

なお、ブラック・ミラーは基本単発ストーリーとなっている為前後の繋がりはありません。

 

バンダースナッチ、実験的な映像手法

さて内容に関してですが、バンダースナッチインタラクティブ(双方向)作品と銘打たれており、視聴者参加型、つまり作品にこちら側からも干渉する形式が取られています。作中ではゲーム・プログラマーの主人公ステファンが「バンダースナッチ」という愛読書のアドベンチャーブック(選択肢があり、それによって次に読むページが指定されるゲーム形式の本)を基にアドベンチャーゲームを制作する事になるのですが、その内容のように映画自体にも選択肢が現れ視聴者がクリックする事により物語が進む試みがされています。

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 出典:Netflix

 上記の画像の通り、映画というより最早ゲームに近いコンセプトとなっており、去年You Tube等のゲーム界隈で流行っていたデトロイト・ビカム・ヒューマンをはじめとする海外のオープンシナリオアドベンチャーゲームを彷彿とさせます。流石はブラック・ミラーという事でしょうか、作中内容の奇抜さだけでなくついにフレームワークにすら実験的な要素を加えてきたようです。

しかしそういった野心的な要素に振り回される事なく、むしろ一体としてストーリーに取り込んだいかにもブラック・ミラー的な社会病質的でディストピア感のある内容が繰り広げられ、選択肢を進めていく程に作品にのめり込みます。

ネタバレとなってしまう為具体的なストーリー展開の紹介は控えますが、「現実とパラレルリアリティが混同し始める」との映像紹介の通り、メタ的なキャラクターやセリフ、SFお得意の上位者的要素がモリモリと詰め込まれており、そういった種類の作品が好きな視聴者の方は特に楽しめると思います。

私は詳しくないのでよくわからないのですが、SFファンの方にとっては本作の舞台の1984年は同名のSF小説が存在する特別な年のようで、そういったミームの取り込みもされている作品のようです。

さて、問題はこの作品は果たして映画なのか?それともアドベンチャーゲームなのか?という問いを個人的に感じたのですが(映像サイトで配信されており、かつ作品カテゴリに映画と表記されている事は一旦置いておいて)、直感的にはやはり映画だと思います。論理的に要素を分析した訳ではないので自信をもって言い切る事はできません。しかし作品全体を通して選択肢を視聴者に与えているものの結局の所製作者が意のままにコントロールしており、何よりそれが映画的な説得力を持ってなされている事が伺えます。結局の所シナリオが存在する以上ゲームも製作者の意図通りに進むと言えるのですが、ゲームにはゲーム特有の開放感というか自由度を感じさせる要素があると思います。とはいえバンダースナッチというタイトルで検索すると攻略記事を書いているブログ等も見られ、映画かゲームかという垣根が曖昧になっているのは確かなようです。結局実写を基に制作されているから映画だと感じているだけなのかもしれません。

昨今はグラフィック技術の向上によりゲーム側が映画に近付く努力をしている事が見受けられ、そのあたりの事情は非常に面白いと思います。

本職の方等詳しい方の考察が気になります。

 

おわりに

まだご覧になっていない方は、ぜひともブラック・ミラー:バンダースナッチを体験して頂ければと思います。そして感涙の美しいハッピーエンドを目指しましょう。

しかし・・・皆様はパラレルリアリティに取り込まれないようご注意下さい。現実では一旦選んだ選択肢は撤回できません。多分。